「“当たり前”を変えたい」——株式会社ふく富が福利厚生として“訪問型病児保育”を導入した理由
- kidsleaffukuoka
- 7 時間前
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—— 株式会社ふく富 代表取締役 新嶋玲奈様インタビュー
■ はじめに
突然ですが、
「訪問型病児保育」が福利厚生として導入できること、ご存じでしたか?
子どもの体調不良で仕事を休まざるを得ない——
多くの働くお母さん・お父さんが抱えるこの課題を、企業として支える仕組みがあります。
博多区を拠点とする「株式会社ふく富」が、従業員のために新たに導入した福利厚生——
それが 訪問型病児保育サービス「キッズリーフ」 です。
今回は、導入の背景や、働くお母さんたちへの想いについて、株式会社ふく富 代表取締役・新嶋様 にお話を伺いました。

株式会社ふく富 代表取締役・新嶋 玲奈(にいじま れな)様
■ 導入のきっかけは「子どもの病気で出勤できない」…その現実から
中野:
キッズリーフを福利厚生として導入された経緯や決め手を教えてください。
新嶋:
ある従業員のお子さまが、1ヶ月のうち半月ほど体調不良で保育園に行けず、出勤できない日が続いていました。
「これを“仕方ない”で済ませてはいけない」と思ったのが始まりです。
色々と調べていく中でキッズリーフさんのHPを拝見し、熱量を感じて問い合わせました。
■ 当日対応できること、それが一番の決め手
中野:
実際に導入されてみて、従業員の反応はいかがでしたか?
新嶋:
とても良かったと聞いています。きめ細やかな心配りに感謝していました。
導入の決め手は、何と言っても「当日でもお願いができる」という点です。
子どもの体調不良は、前日の夜や当日の朝に分かることが多いですよね。
施設型の病児保育だと、その時点で予約が埋まっているのが普通で、結局出勤を諦めざるを得ません。
中野:
確かに、施設型だと当日にならないと利用できるかどうか分からないことが多いです。
無理なら9時くらいに会社にお休みの連絡を入れることになります。
新嶋:
そうなると、結局仕事に行けませんし、前日から諦めてしまうこともあります。
翌日熱が下がればラッキーですが、なかなかそううまくはいかないのが現実です。
■ 「子育てと仕事の板挟み」を経験したからこそ
中野:
育児のご経験からも感じる部分が大きかったとか?
新嶋:
そうですね。
私の場合は、産後1ヶ月ぐらいから職場に戻らざるを得なくて、会社にベビーシッターさんをお呼びしてずっと見ていただいていました。
生後2ヶ月からは、認可外の保育園に預けながら働いていたんです。24時間預かっていただけるところではあったのですが、園庭の環境など、私が思い描いたような保育環境ではなくて。ただ、使い勝手がよかったので本当にお世話になりました。
でもやっぱり、1歳になるまでは本当によく熱を出しました。
駐車場を出た途端にお迎えの電話がかかってくることもあって…。どこの保育園でもそうですが、発熱のハードルだけは絶対にありますよね。
どうやって安心して働ける環境を作るか――それはずっと頭の中にありました。
しかも、なぜか大事な商談の日とかに限って重なるんですよね(笑)。
そういう経験を通して、「私ですらこんなに大変なのだから、勤めている女性はもっと罪悪感を抱えながら休んでいるはずだ」と実感しました。
当時、まだ自社に子育て中の従業員はいなかったのですが、もし同じ状況が自分の会社で起きたら、このままではいられないな、という気持ちが強く芽生えました。
■ 「子どもが理由で働けない社会」を変えたい
中野:
「子どもがよく熱を出すから」という理由で働けないと感じているお母さんが本当に多いです。
「子どもが理由で働けない」社会を、少しずつでも変えていきたいですよね。
新嶋:
そうですよね。本当に共感します。
一時期「保育園に入れない問題」が話題になりましたが、働きたいのに保育園に入れない――だから働けない。
それって当たり前でいいの?と、ずっと疑問に思っていました。
ただ“働きたい”だけなのに、それが難しい社会。
でも、いきなり日本中のお母さんを助けることはできません。
だからまずは、自分の会社で働く身近な女性の従業員が、せめて不安なく働ける環境を整えたい――それが一番の原動力になりました。
もちろん、「日本中のお母さんをなんとかしたい」という思いは、ずっと心の中にあります。
■ 働くお母さんにもたらす”安心感”
中野:
訪問型病児保育というサービスは東京や大阪では10年以上前からありますが、
福岡では、保護者の皆さまから「もう限界です」という声が高まったことで、ようやく訪問型の病児保育が受け入れられるようになったんです。
だから、実際に育児の中での苦悩を経験された経営者の方の言葉はとても胸に響きます。
新嶋:
いやもう、本当にお母さんたちは頑張ってますよね。
朝からお子さまを預けて、お仕事に向かわれていて。
お子さまが病気の時でも働きたいお母さんが、世の中にどれくらいいるのか。
「病気の時はそばにいたい」と思う方もいらっしゃいます。
そのスタンスは人それぞれですが、私は“諦めてほしくない”と思っています。
ただ、現実的には1ヶ月の半分をお子さまの看病で休まざるを得ないとなると、職場に居づらくなってしまう。そんな“居づらさ”を感じてほしくないんです。
そして、意外に理解を得づらいのは男性よりも、実は女性同士なんですよね。
「子どもがいない女性」と「育児中の女性」で温度差が生まれてしまって、言いづらい雰囲気になる。
そういう中で、お母さんたちは毎日「今日は熱出ませんように」と祈りながら仕事してるんですよね。
中野:
本当に。
新嶋:
でも、キッズリーフさんと契約してから、あのお子さまの熱が不思議と出なくなったんです。
きっと“安心感”が伝わったんだと思います。
以前は2〜3日に1回は熱を出していたのに、契約後は1回きりで。こんなこと、初めてでした。
お母さんの心の余裕って、本当にお子さまに伝わるんですよ。
中野:
それは本当に嬉しいお話です。
新嶋:
安心して働けるって、メンタル的にもすごく大きいです。
子どもが体調を崩すと、すぐに「お布団ちゃんとかけた?」「何食べさせたの?」って言われて、エアコン管理や布団のかけ方、食事のことまで責められることもあります。私もめちゃくちゃ言われました。
それに具合が悪いときって、必要以上に不安になって検索魔になっちゃうんですよね。
「脳疾患!?」なんて怖い情報も目に入ります。そんな時に、話を聞いてくれる、寄り添ってくれる人がそばにいる――それだけで救われます。
中野:
実際、登録してくださっている方も「保険のような安心感」で利用されています。
新嶋:
本当にそうだと思います。
常に綱渡りのような日々の中で、こういう“拠り所”があるのは、お母さんたちにとって大きいことですよね。

キッズリーフの病児保育 代表取締役・中野 史也(なかの ふみや)
■ “病児保育”という言葉の誤解をこえて
中野:
現会員さんにアンケートを取った際、「料金の負担が大きい」といった声があり、今は法人向けにも積極的に提案しているところです。
その中で、特に男性経営者の方から「病児保育って“働け”って言ってるみたいじゃない?」という反応をいただくことが多いんです。
新嶋:
なるほど。そういうふうに捉えられるんですね……。
でも、それは“何もわかっていない”というのが正直なところです。
日本はまだまだ「子育てはお母さんの仕事」という前提の上で社会が動いています。
中野:
本当にそう思います。
「病児保育って何?」というところからのスタートで、まず“病児保育そのもの”をご存じでない方がまだ多いんです。
そのうえで、「休ませてあげたほうがいいんじゃない?」という反応が返ってくることも少なくありません。
新嶋:
「病気の子をほっといて働くの?」という価値観ですよね。
従業員が使命感ややりがいを持って働いているなら、「支えたい」と思うのが経営者だと思います。
今回、病児保育を導入したのも、その従業員が仕事に使命感ややりがいを持っていて“本気で働きたい”という気持ちがあったからこそです。
そうじゃなければ、正直そこまでの支援はしなかったと思います。
中野:
確かに……。
新嶋:
重要な商談や意思決定の場は男性が担い、女性の仕事は“代わりがきく”と思われてしまう。役員に女性を増やす取り組みもありますが、ポストを“数合わせ”で作っているだけでは意味がありません。
女性が実力をつけて、スキルを磨ける環境を整えなければ、社会は変わらないと思います。
そして「結婚したら辞める」「出産したら辞める」という考え方がまだ残っています。
中小企業では特に、育休を取る・支援体制を整えるというのが現実的に難しい。
でも、そこを変えていかなければ、病児保育のハードルも高いまま。
企業も社会も、意識から変わっていく必要があると思います。
■ 福利厚生として会社負担にした理由
中野:
以前、料金の負担割合についてカスタマイズできるとお話したときに、「病気の子を預けて働いていただけるのに、負担をかけたくない」とおっしゃって、会社負担にすると決めてくださいました。
新嶋:
経営としては、当然、経費や利益とのバランスは考えますよ。でも、病気の子どものことは気になりますし、仕事とのバランスをとるのにお母さん方は必死だと思います。
今、施設型の病児保育って無償化ですよね。それなのに従業員に当たり前に料金を全額負担させるのはおかしい。
負担してまで子どもを預けて来なければいけないとなったら、仕事も嫌になりますよ。
子どもの病気が嫌な思い出にならないように、 働くお母さんが笑顔で仕事ができるように、会社で支援していこうと今回の導入を決めました。
■ さいごに
中野:
改めて導入いただき、ありがとうございます。
最後に、振り返って感じたことをお聞かせください。
新嶋:
こちらこそ、ありがとうございます。
お話ししたように、病児保育を福利厚生として導入する場合、仕事への意欲ややりがいを持たない方だと、「働けと言われている」と感じてしまうこともあります。
せっかくの制度が、意図せず裏目に出てしまう可能性もあるんです。
しかし、うまく運用できれば、採用時にこの福利厚生の意義を理解してもらうことで、子育ても大事にしつつ、仕事に意欲や使命感を持つ方を採用し、定着につなげることができます。
この費用で優秀な人材を採用・定着できるなら、経営者にとって大きなハードルにはならないはずです。
こうした成功事例が増え、多くの企業経営者に理解されることで、福岡が女性が働きやすい街NO.1を目指していけると良いですね!
編集後記
今回、「株式会社ふく富」の新嶋様にお話を伺い、訪問型病児保育サービス「キッズリーフ」導入の背景や、 働くお母さんたちへの想いを深く知ることができました。
子育てと仕事の両立に寄り添うことは、企業にとっても大きな価値を生みます。
ベネフィット・ワン等の調査では、子育て支援制度の充実により、従業員満足度(eNPS)が平均 +15〜20ポイント改善する効果があるとされています。
また、育児支援制度を福利厚生として導入した企業では、離職率が30%〜40%改善したという事例もあり、企業にとってのメリットも非常に大きいことがわかります。
「子どもが理由で働けない」
その当たり前を変えようとする企業の取り組みが、次の一歩を踏み出すきっかけに、きっとなりますように。
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